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中国律師、
日本人弁護士を語る(後編)

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中国律師、日本人弁護士を語る 後編

 近年、日本の法務人材が海外進出するケースが増加しています。この連載では、日本の法務人材が中国を選ぶ理由、中国での日本人弁護士の価値について、株式会社ジュリスティックスの野村慧氏(写真中央)、AZ MORE国際法律事務所の小堀光一氏(写真左)、北京盈科律師事務所上海オフィスの彭涛氏(写真右)の皆様に、日本と中国双方の法務経験を踏まえて、座談会形式でお話しいただきます。



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  中国律師、日本人弁護士を語る 前編



 

中国律師の強みは、実行力

野村 中国専門の日本人弁護士と比較して、中国律師の強みは何だと思いますか。

小堀 最短で最終的な着地点まで持っていく、そしてその手段を複数提案する思考が常にあるところは、中国律師の強みだと思っています。
 一般論として、日本の弁護士法と同じように、中国の律師法では、中国の資格を持つ中国律師しか、依頼者に対して中国法の解釈に関する回答をしてはならないことになっているので、彼らに中国法の理解や解釈を委ねざるを得ません。ただそこにとどまらず、依頼者の目的を達成するための選択肢の提示と実行力は、日本人弁護士が大いに学ぶべきところだと思っています。

彭涛 小堀さんからもあったように、中国では原則的に外国弁護士による中国法に関する解釈はできないことになっていて、特に紛争解決は、中国律師が対応せざるを得ません。そういう意味で、中国律師は外国弁護士と比べて圧倒的に経験が豊富だと思います。また、「外国人弁護士が出てくると、先方が警戒して実質的な話ができない」という話をよく聞きますが、中国律師は国の事情をよく理解していて、当局、企業または個人とコミュニケーションをとりやすい部分があります。

 最後は、人脈も重要です。私は日本で長年仕事をしましたが、官庁にわからないことを聞くと、すごく親切に説明してくれました。一方、中国はここ2、30年で法律の体制が整ってきたと言われていますが、実際はその一部がまだ整備されておらず、細かい解釈は出ていません。そうすると、実務の解釈が非常に重要になってくるのですが、一部の行政部門の担当者は親切に教えてくれない(笑)。当局に人脈を持っていれば、それらの担当者が親切に教えてくれ、確実な回答を得られる可能性は高くなります。



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小堀 確かに、行政に問合せても、電話が一日中つながらない、呼び出し音が鳴っても出てくれない、春節前は取り扱ってくれない、ということはよくあります。窓口の対応も、担当者によって全く違ったり、たらい回しにされたりします。

彭涛 実際、電話で対応する若い担当者のレベルがそこまで高くない。彼らは実務にあまり慣れていないので、明らかにおかしい回答が出てくることもあります。ある程度の弁護士経験、つまり行政の担当者の解釈が間違っていることを見破る能力も必要です。問い合わせの結果そのまま依頼者に伝えると、大変なことになります。

野村 見破った後はどうするのですか。

小堀 追及の仕方ですよね。重要なプロジェクトで、これは事前に法律の調査もヒアリングも含めて、確定しておきたい場合は、電話ではなく実際に担当官庁へ行き、窓口の担当者と話しをする。その人がダメなら上司を呼んでもらい、より正確と思われる情報にアクセスする。人脈があれば直接上に聞けますが、それがまさに中国で結果を出すための段取りになります。

野村 どういう人脈を持っているかは、かなり重要ですね。

小堀 実務を踏まえた段取りの中に、人脈を位置づけられていることが重要です。抽象的に「私には●●という偉い人とのコネクションがある。」と言われたところで、具体的な案件にどう役立つのか分からない。「結果を出すためにABCの段取りがあり、その段取りを組む中でこの人脈が役立つ」という提案の仕方をしてくれるか。できる律師かどうかを見極めるには、依頼者が求めている結果に辿り着くための段取りを組んでくれて、その中にリソースをどう埋め込んでくれるか。そこは日本人弁護士より中国律師の方が明確ですね。

野村 中国律師と日本人弁護士のどちらが優れている、という世界ではないということですね。

小堀 個人的には、ないと思います。弁護士問わず、日本人は、1つ1つロジックを組み立てて結論まで持っていこうとします。一方で中国人は、まず結論があり、どうしたら一番速く結論に辿り着けるか、という頭の動かし方をします。日本人と中国人の考え方の違いというか、そもそもの出発点が全く違う気がします。

彭涛 おそらく、長年そうした仕事の仕方をしてきたからだと思います。日本企業は段取りを組み、細かい分析をする習慣、歴史がある。一方で中国企業は、そこまで求めていない。ただ、現在は中国も大企業が増えて、リーガルサービスに求める質はだいぶ高まっており、能力の高い中国律師は大勢現れていると思います。


できる律師は、
コミュニケーション能力と専門性を持つ

野村 できる律師を見分けるポイント、判断基準を教えてください。

小堀 中国法の知識や経験よりも、もっと前段階のコミュニケーション能力を見てほしいです。
 例えば、日本企業が「AですかBですか」と質問を投げかけているのに、「黄色です」と質問とかみ合わない回答をされてしまう場合が、実は結構あります。そこで「AとBもありますが、より良い回答は黄色です。なぜなら」と隙間を埋めてくれる、日本人に説明してくれるかどうか。ただ実際は、結論を提示して「これしかないです」と言われる時も少なくない。日本人弁護士にもいるかもしれませんが、「質問はさて置き、私はこう思います」で終わってしまうこともあります。

 結局、中国はグレーゾーンが多く、法律がこう、実務がこう、というのがある一方、割り切れない部分もあります。「こういうリスクがあります、それでもやりますか」という段取りを組むことがすごく大事で、「その都度落とし穴があるかもしれない」というコミュニケーションをクライアントととれるか。そこができている律師であれば、信用していいのではないかと思います。

彭涛 判断基準は、立場によって色々だと思います。例えば中国企業の場合、問題解決できるかどうか、日本企業の場合、日本企業のやり方に慣れているかどうか、そこが判断基準になると思います。

 小堀さんの言ったコミュニケーション能力とともに、専門性、仕事の習慣も非常に大事ですね。昔は何でもできる弁護士が多かったのが、近年中国のリーガル業界でも、非常に高い専門性を持つ律師が大勢現れています。専門性の高い重要なプロジェクトは、日常的にその分野を扱っている律師でないと、適切なアドバイスはできません。そういう意味で、プロジェクトによって言語力以上に専門性を求めることが望ましい場合があります。

小堀 確かに、昔は日本でも弁護士はある程度の法律問題に対応できて、「専門は何か」と聞かれることはなかったと思います。それが今は「専門は何か」と聞かれるようになりました。中国も、私が留学した当時はそれほど専門性に特化していなかったのが、ここ数年特に専門性が高まり、日々特定の分野を扱っている人でないと回答は難しい、という分野も出てきている。まさにそういう時代なのだと思います。



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ずっと中国法務に携わる気持ちで

野村 法律の勉強をしている日本人に、中国法務を薦めますか。

小堀 日本人の立場からして、中国での日本人弁護士の価値がなくなることはないと思います。ただ、表面を少し撫でただけの「中国語少し話せます」とか「友だちに中国律師がいます」ということでは、価値を見出していただけない。

 私はこれからもずっと中国法務に携わるつもりですが、中国法務に踏み込むのであれば、1、2年で日本に戻ってくるのではなく、数年、10年単位で、中国法務にずっと携わり続ける覚悟でやっていかないといけない。ある大手事務所のパートナーは、「中国法務は一方通行だから、やるならとことんやれ。途中で戻ったら、下りエスカレーターのようにまた下ってしまう」と私に言いました。「やってみたい」だけなら止めた方がいい。どこまで好きでやれるかだと考えています。

野村 それだけの面白さがあるのですね。

小堀 面白いです。やはり、結果を出してなんぼの世界なので。結果まで持って行くことの楽しみは、私は中国法務で学ばせてもらいました。そういう意味で楽しいですよ。

彭涛 日本の多くの学生は、将来性のある業界、業種を就職先に選んでいるのではないかと思います。そういう意味では、中国法務はまだ大きなマーケットがあると考えています。

 近年撤退も多いと言われていますが、日系中国現地法人の数は毎年着実に増えていて、現在3万社以上と言われています。現地法人がある以上、法律業務は発生するので、中国法関連の業務は減っていないと実感しています。一方、近年中国企業による日本進出は目覚ましい成長を見せていて、日本にある中国法人は法務人材を探しています。

 そうしたニーズもあるので、中国法務の経験がある人材、中国に駐在して社会と触れ合い、国の事情もある程度わかる人材は、非常に重要な存在になると思います。中国法務における活躍の場はまだまだ増えるのではないでしょうか。

小堀 ただ、日本人が「中国法務を知っています、中国語が話せます」と言ったところで、中国律師には勝てません。中国法務を学んだからどうではなく、中国法務を通じて、中国現地の企業の考え方、どういう動き方で結論を出そうとしているのかを知り、さらにもう一段階下がったところの体温を感じることができれば、インバウンドで来た企業に対し、「私は中国企業の考え方を知っています」と言うことができる。

 それは中国法務を勉強したから言えるのではなく、中国法務を通して、中国の経済、企業、体温を感じたからこそ、次につながる経験になったと私は思っています。そこまで行くには、中国法務の勉強で終わりではなく、その先にあるものを獲得してこそ次につながる、ということを考えてほしいです。


取材・編集:八島心平、丸田由佳子
写真:伊藤玲


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(左から、小堀光一氏、野村慧氏、彭涛氏)

Profile

小堀 光一(こぼり こういち)
[AZ MORE国際法律事務所パートナー弁護士]

2017年6月に中国駐在歴約6年の弁護士3名で開業。日系企業に対する中国法に関するアドバイスのほか、中国企業に対する日本法に関するアドバイスを行う。日中いずれの企業もクライアントであることから、双方の思考の違いを踏まえた対応が可能。近著に『親会社が気づいていない中国子会社のリスクとそのマネジメント』(第一法規株式会社)。


野村 慧(のむら あきら)
[株式会社ジュリスティックス リーガルプレースメント事業部長 ]

リーガル人材の転職支援において日本トップクラスの実績を有するヘッドハンター。大手法律事務所の海外展開のための人材面での支援、東証1 部上場企業の法務課から法務部昇格のプロジェクトに関与する等、活動は多岐にわたる。文部科学省「平成27 年度先導的大学改革推進委託事業」における「法科大学院修了生の活動状況に関する実態調査」の調査担当。著作に、『弁護士・法務人材 就職・転職のすべて』(レクシスネクシス・ジャパン)。


彭 涛(ぽん たお)
[北京盈科(上海)律師事務所 律師(中国弁護士) ]

長年日本大手弁護士事務所で執務し、主に日系企業をクライアントとして中国ビジネスに係る法的アドバイスを行う。そのうち、2014年から拠点を東京から上海に移し、多くの日系企業が進出している蘇州、無錫、杭州等においても活動している。事務所の中国国内40箇所以上の拠点のネットワークを生かし、各地域に進出する日系企業にリーガルサービスを提供できる。





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