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中国律師、
日本人弁護士を語る(前編)

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中国律師、日本人弁護士を語る 前編

 近年、日本の法務人材が海外進出するケースが増加しています。この連載では、日本の法務人材が中国を選ぶ理由、中国での日本人弁護士の価値について、株式会社ジュリスティックスの野村慧氏(写真中央)、AZ MORE国際法律事務所の小堀光一氏(写真左)、北京盈科律師事務所上海オフィスの彭涛氏(写真右)の皆様に、日本と中国双方の法務経験を踏まえて、座談会形式でお話しいただきます。



加速する
国内法務人材の海外進出

―― 自己紹介をお願いします。

野村 私は、株式会社ジュリスティックスのリーガルプレースメント事業部長をしています。弁護士や企業内法務のリーガル人材を専門とするヘッドハンター業をメインに、採用コンサルティング業務、大学とロースクールでのリーガルキャリア講演等の活動をしています。昨今、外国法弁護士からのキャリア相談も多く、特に中国律師からのご相談が多い状況です。

小堀 私は、AZ MORE国際法律事務所のパートナー弁護士をしています。2008年に弁護士になり、日本で企業法務、一般民事、刑事の案件を一通り経験しました。2011年に北京へ語学留学し、律師事務所で研修を受けました。その後北京、上海、香港でキャリアを積み、弁護士法人キャスト上海事務所首席代表を務めたところで独立し、現在のAZ MORE国際法律事務所を開業しました。

彭涛 私は、北京盈科律師事務所上海オフィスの中国律師(弁護士)をしています。2003年に日本へ留学し、2008年に日本の大手事務所へ入所しました。2014年に上海へ戻り、最初は同事務所の上海オフィスに勤めていましたが、2015年の年末に現在の北京盈科律師事務所上海オフィスへ移りました。日本にいた頃と同じく、主に日系企業の中国進出と中国現地法人の運営に関するリーガルサービスを提供しています。


―― 日本の法務人材の海外進出について、現状はどうですか。

野村 日系企業は、法務部員をヘッドクォーターから海外駐在させるケースを増やしています。法務部員数が増加し、駐在させるマンパワーが上昇していることが背景にあります。シンガポール、香港、北京、上海などの地域に海外駐在させる動きがございます。それらの地域のコーポレート部隊に日本の法務人材を配置するケースが増加しているのです。今後、数年間で法務人材を増加させ、海外駐在させることを目標にしている企業もございます。海外駐在を法務のジョブローテーションの中に組み込み、育成し、ガバナンスを効かせていく動きです。

 法律事務所では、日本の法律事務所のASEAN進出が挙げられます。特に、昨年末に森・濱田松本法律事務所が実施(注1)した、タイの大手法律事務所チャンドラー・アンド・トンエックの買収と経営統合は、業界でも大いに注目されています。大手事務所に限らず、日本の若手・中堅弁護士も含め、ASEANでの種を探そうと動いており、実際にビジネスが成立するケースが増加しています。こうした状況は、今後ますます加速すると見ています。



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中国律師の年収が上昇傾向

―― 中国律師の採用について、昨今の動きはどうですか。

野村 日系企業または日本の法律事務所が中国律師を雇用する場合、以前は年収400~700万が多かったのですが、それが昨今上昇傾向にあり、800~1200万が目安になっています。中国律師は、中国語、日本語、英語の3つを兼ね備えているケースもあり重宝されているためです。
中国律師が日本マーケットで採用されるケースと日系企業・法律事務所に採用されるケースに限定し採用主体を整理すると、以下になります。

 ・日系企業のヘッドクォーターの中国法務担当・責任者
 ・日系企業の中国拠点の法務担当・責任者
 ・日系法律事務所の日本オフィスもしくは中国オフィス
 ・外資系企業の日本オフィスのインハウスローヤー
 ・外資系法律事務所(日本オフィス)

 外資系法律事務所に転職する、または外資系企業の日本オフィスのインハウスロイヤーとして就職する場合、年収1000~2000万の高水準の方もいます。外資系が雇用主体となる場合の特徴として、日本国内でもグローバル水準で採用されているのです。

小堀 日本人弁護士が企業に採用される場合も、年収は上昇していますか。

野村 若干上昇しています。現在は売り手市場であり、国際法務ニーズが強いため、かかるニーズに対応するために、年収を上げるケースが増加しています。現在の転職マーケットでニーズが強いのは、英語力があり、企業内法務の経験または法律事務所での企業法務の経験がある中国律師です。


広がりを見せる中国のマーケット

野村(以後、司会)日本の法務経験者や弁護士資格者が、海外の進出先として中国を選ぶ理由は何だと思いますか。ご自身の経験を踏まえてお聞かせください。

小堀 私が司法修習生だった当時、中国のGDPは確実に日本を超えると言われていました。その大きな流れの中で、中国進出した日系企業が困っていることも推測できたので、その場に身を置き、日系企業の役に立ちたいと考えました。司法修習時代に中国語教室に通い始め、弁護士を3年間経験した段階で、中国へ行きました。

野村 実際に中国へ行って、どう感じましたか。

小堀 当時と現在で、日本人弁護士の印象はだいぶ変わりましたね。当時の日本人弁護士の役割はすごくシンプルで、コミュニケーションの部分で中国律師と日系企業の間をつなぐ役割、というイメージを私は持っていました。それが現在は、中国語の知識と経験を踏まえて、中国律師とより緊密に、互いにアドバイスをし合いながら仕事を進めていく役割、というイメージに変わりました。

野村 当時と現在の留学状況に変化はありますか。

小堀 留学生の数は減少している印象ですね。中国にいる日本人自体が激減して、それに伴い業務も減少しています。マーケットが拡大しないと思い、留学しなくなった弁護士や日本へ戻ってくる弁護士が増加しています。

野村 日本人弁護士が中国で勝負していくには、厳しい時代が来ていると。

小堀 厳しいと思います。昔のように中国律師と日系企業の間に立って、意思疎通を図るコミュニケーターの役割だけで報酬をいただける時代ではなく、一歩下がって深いところまで行かないといけないと思っています。

野村 中国には数千人規模の事務所が複数あり、全体のマーケットからすると、パイは広がっている印象がありますが。

小堀 日本と比べて、中国は訴訟件数も急激に伸びているので、中国法務マーケットという観点では、ものすごく広がっています。

彭涛 最大の要素は、経済の活発化に伴い、リーガル業務が増加していることと、一般人の意識の変化です。昔は弁護士に依頼して契約書を作成するという意識が弱く、問題が発生した段階で弁護士に依頼すればいいという発想でした。それが近年、事前の防衛という意味で、全体的にリーガル業務が増えていると思います。



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日本人弁護士に求められる、
プラスαの価値

野村 中国での日本人弁護士の価値は、何だと思いますか。

小堀 中国律師と日系企業の間のコミュニケーターとして価値を見出していた時代は、もう過ぎました。これからは、プラスαの価値を提供していかなければいけないと思っています。

 例えば、中国企業と中国語を使って自ら交渉でき、かつ相手方である中国企業の信頼をも勝ち得ることができるか。依頼者から伝えられた目的に対し、「法律ではこうなっています。」という回答だけではなく、実務を踏まえて複数の選択肢を提示し、具体的にどういう方法論があるかを説明できるか。よく言われる人脈もそうですが、目的にアプローチするための選択肢が複数ある中、中国律師と共同で、最短でゴールに近づける道筋を提供できるか。
 そこまで提供できないと、価値を見出してもらえません。聞かれた質問に答えるだけではなく、依頼者が気づいていない新しい選択肢を提示する必要もありますから、日本の感覚でいえば弁護士というよりもコンサルタントのイメージでしょうか。「法律はこう、実務はこう」と二段階でアドバイスをする必要があると考えています。

彭涛 私の見てきた限り中国は進歩していますが、法律面でもやはり結果主義が大変重視されています。プロセスはともかく、お客さんが望む結果を出せるのが良い弁護士、という考え方が昔からあります。
 その中で、日系企業と中国企業では、求めているリーガルサービスが少し違う気がします。日系企業は、結果だけでなくプロセスも会社として管理したい。弁護士に対し、事前調査、計画作成、プロセスの詳細な報告を求めます。一方、多くの中国律師はそこまで細かい対応に慣れていない部分が大きいと思います。
 その点、日本人弁護士は日系企業がリーガルサービスに求める質を知っていて、そうした仕事の仕方に慣れているので、非常に価値があるのではないかと思います。

小堀 単純につなげるだけでは価値が乏しいという状況を踏まえて、依頼者にどういう提案ができるか。半年なり1年間中国に語学留学して、それで「中国法務できます」とは言いづらい。中国語を勉強し、法律を勉強し、法律と実務の違いを知り、段取りを知り、現地の体温を知る。私は中国へ行って6年になりますが、まだまだ日々勉強です。

彭涛 我々が一緒に仕事をしている日本の大手企業の法務担当者は、中国法務の豊富な経験があり、知識量が膨大です。彼らから出てくる質問は、実務の経験が求められるものが多く、弁護士に求める質が高まってきています。

小堀 そうですね。法律が変わるのも速く、我々が考えるよりもっと高いレベルを求められている。法律を知り、実務の運用も知った上で、それでもなお「例外的な動きはできないか、そうした人脈はないか」というサジェスチョンが求められます。

彭涛 私は2014年まで日本で中国法務をしていましたが、いざ中国に帰ると、日本では全く意識していなかった問題、また、法律上はこうなっていますが、実務上はそうでもない問題が大量にありました。やはり中国現地での経験は非常に大事だと、私も自身の経験を踏まえて実感しています。


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(後編につづく)



取材・編集:八島心平、丸田由佳子
写真:伊藤玲


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(左から、小堀光一氏、野村慧氏、彭涛氏)

Profile

小堀 光一(こぼり こういち)
[AZ MORE国際法律事務所パートナー弁護士]

2017年6月に中国駐在歴約6年の弁護士3名で開業。日系企業に対する中国法に関するアドバイスのほか、中国企業に対する日本法に関するアドバイスを行う。日中いずれの企業もクライアントであることから、双方の思考の違いを踏まえた対応が可能。近著に『親会社が気づいていない中国子会社のリスクとそのマネジメント』(第一法規株式会社)。


野村 慧(のむら あきら)
[株式会社ジュリスティックス リーガルプレースメント事業部長 ]

リーガル人材の転職支援において日本トップクラスの実績を有するヘッドハンター。大手法律事務所の海外展開のための人材面での支援、東証1 部上場企業の法務課から法務部昇格のプロジェクトに関与する等、活動は多岐にわたる。文部科学省「平成27 年度先導的大学改革推進委託事業」における「法科大学院修了生の活動状況に関する実態調査」の調査担当。著作に、『弁護士・法務人材 就職・転職のすべて』(レクシスネクシス・ジャパン)。


彭 涛(ぽん たお)
[北京盈科(上海)律師事務所 律師(中国弁護士) ]

長年日本大手弁護士事務所で執務し、主に日系企業をクライアントとして中国ビジネスに係る法的アドバイスを行う。そのうち、2014年から拠点を東京から上海に移し、多くの日系企業が進出している蘇州、無錫、杭州等においても活動している。事務所の中国国内40箇所以上の拠点のネットワークを生かし、各地域に進出する日系企業にリーガルサービスを提供できる。





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