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株式会社メタップス

GVA法律事務所 弁護士 山本 俊、飛岡 依織

Venture

レクシスネクシス・ジャパン(株)が提供する法令・判例・行政総合ソリューション「Lexis AsONE」で好評連載中のオリジナルコンテンツ「Business Issues」から『弁護士の視点から観るベンチャー業界ユニーク人事制度事例集』をご紹介します。今回は「株式会社メタップス」の人事・労務制度を解説します。(平成27年11月16日 Lexis AsONE上で公開)



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1 はじめに

 本連載は、注目のベンチャー企業が実際に採用するユニークな人事・労務制度について、労働法の観点から解説する連載企画です。今回は、株式会社メタップスの人事・労務制度について解説します。

 株式会社メタップス(以下「メタップス」といいます。)は、人工知能を使ったアプリの集客・分析・収益化をワンストップで支援するプラットフォームサービス等を運営する企業です。2015年2月に約43億円を調達し、8月には上場を果たしたIT業界注目の企業です。

 同社は、積極的なグローバル戦略を推し進めており、2015年10月現在で、すでに東京、中国、韓国、シンガポール、香港、台湾、アメリカ、ロンドンで事業展開をしています。日本企業はグローバル展開に弱いといわれる中、海外事業展開に成功しているメタップスの進出戦略・ノウハウについて、労働法の観点から解説していきます。


2 メタップスの海外人事労務戦略

 現在、メタップスのメンバーは総勢約100名、そのうち、海外で働くメンバーは約半数にのぼり、売上げにおいては、海外が約半分以上を占めています。では、現地で働くメンバーの採用や給与などの処遇についてどのように決定しているのでしょうか。

 メタップスの場合、海外オフィスの採用戦略については、本社である東京オフィスにおいて売上等を考慮して予算枠を決定しますが、実際にどのような人材を何人採用するかなどの具体的な戦略は、現地のトップが決定するといいます。現地オフィスのトップはほとんどが現地採用ですが、事業運営だけでなく、人事制度に関しても大きな裁量を与えているのです。このように大きな裁量を認める理由は、現地の文化・慣習を知り、現地の人間を知る人材だからこそ適切な人事戦略を練ることができるからだといいます。

 また、日本からの転勤により海外で働くメンバーはおらず、積極的に現地採用を進めているというのも特徴の一つといえます。
 もちろん、すべてを現地に任せきりにするわけではなく、東京オフィスの役員やGL担当者が頻繁に現地に通い、現地トップやメンバーと意見交換をして、情報共有を行うとともに、考えのすり合わせを行うといいます。

 特に特徴的といえるのが、年に1回、東京で約1週間にわたって開催される全世界の全メンバーを集めた全社ミーティング「グローバルカンファレンス」です。最大の目的は、世界中に散らばるメタップスメンバーの交流と理念の浸透にあります。
 メタップスでは、メンバー個々人の能力と自由を重視しており、組織としての統率や統一性などを強く押し出すスタンスをとっていません。このような同社の姿勢は、後述のとおり、同社が海外展開において成功している大きな要素の一つといえるでしょう。

 しかし、年1回の全社ミーティングでは、様々な国・地域のメンバーと交流できるようなプログラムを組み、また、同社代表の佐藤氏が直接その理念を全メンバーに語り掛けるといいます。具体的な事業戦略や仕事への取組みといった行動レベルでは、各人の自由を重んじることでその能力を十分に活かしつつ、組織に大きな方向性を与える理念やカルチャーは共通のものとしてメンバーに浸透させ、一体性を生み出す工夫をしているのです。


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(オフィスで直接メンバー達と語らう佐藤氏)


3 海外諸国の雇用法制

 当然のことながら、各国によって異なる雇用法が制定されており、日本では当然と思われている制度が全く通用しない場合も多々あります。海外に進出した日本企業は、その国で人を雇用してビジネスを行う限り、当該国の雇用法制に従った人事労務制度を構築する必要があります。

 例えば、シンガポールは、日本と比較すると極めて使用者寄りの雇用法制が敷かれており、そもそも雇用法の適用対象となる労働者の範囲が狭いという特徴があります。適用対象外の労働者については残業代の支払義務が発生しません。また、適用対象であっても、最低賃金、解雇規制、残業代の割増賃金、就業規則作成義務など、日本では当然に法的義務とされている規制がほとんどありません。これは、シンガポールが、自国民の人口が少ないうえに失業率が2%程度(2015年現在)と極めて低く、また、国際的なハブとして外資企業を多く誘致していることから、同国で働く者の大半が高所得で転職可能性の高い外国人であること等に起因していると考えられます。

 一方、同じアジアの国でも、タイでは、比較的日本に近い雇用法制がとられています。解雇規制は日本と同様、事前の解雇予告が必要とされ、就業規則の作成・届出義務や最低賃金の定めもあります。もっとも、退職金が法律上の義務とされ、勤続年数に応じた金額まで定められている点、割増賃金率が日本より高い点などは、日本以上に事業者に厳しいといえます。これは、タイの歴史的背景として、安価な労働力を求めて進出してきた欧米諸国や日本の企業等に雇用された工場労働者等の待遇の問題など、労働者保護の必要性が高まったことに起因すると考えられます。

 また、イギリスでは、長い産業の歴史の中で雇用法制が成熟し、育児休暇等をはじめとする福利厚生の面では、日本よりもはるかに労働者保護のための制度が充実しています。一方で、労働力の流動性が高く、転職市場が活発な同国においては、不当解雇を主張できるのは2年以上継続勤務した者に限られ、損害賠償額に上限があるなど、解雇規制は日本よりもかなり柔軟といえます。もっとも、人種、性別、宗教等を理由とした差別による解雇については厳しい規制が課せられており、実際に紛争化するケースも多い点は、多種多様な人種によって成り立つ同国の歴史的文化的背景に起因するものと考えられます。



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