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各国の労働者派遣法制

人材サービス総合研究所 所長 (経営コンサルタント) 水川浩之

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2016年10月、レクシスネクシス・ジャパン(株)から新刊書『雇用が変わる』が刊行されました。この連載では、その導入部となる第1章を全6回に分けてご紹介しています。連載最終回となる第6回は「各国の労働者派遣法制」です。



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(1)EU加盟国の労働者派遣

 現在、我が国がその規制のあり方について参考としているのは、主にヨーロッパ各国の動向です。
 本書の発行時点では、2012年11月7日に厚生労働省で開催された「第3回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」での有識者からのヒアリングにおいて、労働政策研究・研修機構(JILPT)主席統括研究員の濱口桂一郎氏から発表された内容が最新かつ最も充実したものであると考えられるため、これを参照して主な国の労働者派遣法制定の経緯、法的地位、均等待遇、サービスの利用理由、派遣受入期間制限、業種・業務の制限など主なポイントについての状況を記しておきたいと思います。

 これを見ると各国の制度が多種多様で興味深いものがあります。今後の我が国の労働者派遣法のあり方を考えるうえで参考になるものといえるでしょう。
 なお、この時点では「EU派遣労働指令」が発効された2008年以後の状況を概観した資料はないとのことです。


イギリス
 1973年の雇用仲介業法により許可制が導入されるまでは、労働者派遣事業への規制はありませんでした。その後、1976年に苦情処理などのしくみが設けられました。
 派遣労働者は、「Worker(就労者)」ではあっても「Employee(被用者)」ではないとされ、最低賃金や有給休暇の規定は適用されるものの、解雇予告や不公正解雇、教育訓練などについては規定がありません。また、派遣労働者と派遣先企業の正規労働者との均等待遇原則についても規定されていません。今後、EUを離脱することでなんらかの変化があるかもしれません。


フランス
 1973年の雇用仲介業法により許可制が導入されるまでは、労働者派遣事業への規制はありませんでした。その後、1976年に苦情処理などのしくみが設けられました。
 派遣労働者は、「Worker(就労者)」ではあっても「Employee(被用者)」ではないとされ、最低賃金や有給休暇の規定は適用されるものの、解雇予告や不公正解雇、教育訓練などについては規定がありません。また、派遣労働者と派遣先企業の正規労働者との均等待遇原則についても規定されていません。今後、EUを離脱することでなんらかの変化があるかもしれません。


ドイツ
 1972年に労働者派遣法が制定され、常用型派遣に限定されるとともに、派遣受入期間も3か月に制限されました。その後、上限1年に延長されましたが、さらに、2002年にハルツ改革によって期間制限が撤廃されました。常用型派遣への限定も撤廃され、登録型派遣が認められるとともに均等待遇が導入されました。
 ドイツを含むゲルマン系の諸国にはサービスの利用理由に制限はありませんが、派遣先企業の労使協議が派遣労働の利用についての共同決定権をもっており、これにより派遣労働の濫用を防止するしくみになっています。
 2004年までは、建設業務への派遣は禁止されていましたが、現在は派遣元事業者、派遣先企業双方で労働協約が適用されることを条件に認められています。


オランダ
 違法な労働ブローカーの横行に対処するため、1965年に臨時労働供給法が制定され、許可制が導入されました。その後1998年の労働市場仲介法により、許可制が撤廃されましたが、均等待遇や利用者企業の責任などの規定は残されました。


ベルギー
 1976年の労働者派遣法で派遣労働者の保護などについて定められましたが、実際には派遣労働合同委員会や全国労働審議会などを通じた労使交渉によって労働条件等が決められています。
 サービスの利用理由を厳格に制限しているのはラテン系諸国に多く、ベルギーでもフランスと同様に労働者の一時的な休業の代替、業務を廃止するまでの残された期間や常用労働者の着任まで期間への補充、業務の一時的な増加、短期間の業務などに限定されています。
 適用対象業務については、2001年に建設業、2005年に農業、ホテル業、レストラン業での派遣労働が解禁され、制限されているのは危険業務と公的部門のみとなっています。


イタリア
 1994年法により均等待遇などが規定されましたが、労働協約が重要な役割を果たしています。スペインでもフランスと同様に高齢者、障害者、若年者、低技能者などの就職促進のためのサービスの利用が認められています。


スペイン
 1997年の法律で労働者派遣事業が初めて合法化され、許可制とともにサービスの利用理由の制限、均等待遇原則が規定されました。サービスの利用理由については2003年の法改正で拡大され、フランスと同様に高齢者、障害者、若年者、低技能者などの就職促進のための利用が認められました。


スウェーデン
 1993年に民営職業紹介・労働者供給法が制定されましたが、大部分は労働協約によって規制されています。派遣労働者の雇用契約については、常用型派遣に限定されています。
 イギリス、アイルランドと同様に均等待遇原則は規定されていません。労働組合の組織率が極めて高いため、労働協約で事実上の労働規制を行うという特徴があります。
 職業紹介法によって労働者派遣事業は許可制とされていますが、派遣の合間の期間の賃金について、ホワイトカラーの派遣労働者は派遣時の80%、ブルーカラーの派遣労働者は派遣時の90%を保証する労働協約が締結されています。法律上の規制はありませんが、派遣労働者は常用型労働者と見なされるため、均等待遇原則の必要がないといえます。


デンマーク
 1968年の民間職業紹介機関の監督に関する法律により、派遣労働の適用対象業務は商業と事務所に限定されていましたが1990年に撤廃されました。
 スウェーデンと同様に均等待遇原則は規定されていません。そもそも労働立法がほとんどなく、労働者派遣も中央労使団体間の労働協約で規制されています。スウェーデンと異なるのは、派遣労働者はほとんどが有期契約であり、派遣元事業者で労働協約の適用を受け常用型労働者と同等の待遇を受けています。


 必ずしもEU域内各国で統一されたものではないものの、根底には「EU派遣労働指令」があり、今後も一定の方向に修練されていくことが予想されます。
 グローバル化が進む中、日本企業の海外進出と同様に、外資系の企業も我が国に参入していることを考慮すると、雇用に関する法規制も国際的に理解を得られるものにしていくことが求められるのは明らかです。
 逆にこれに対応できなければ、我が国は国際社会から取り残され、経済も立ち行かないことになるため、「EU派遣労働指令」をヨーロッパの他人事と軽視するわけにはいきません。

 現在の厚生労働省の労働政策審議会や各種の研究会などでの議論を俯瞰すると、比較的経済規模の大きなフランスやドイツを中心に、失業対策として多様な働き方を促進し労働市場改革でワークシェアリングを導入したオランダ、労働市場の柔軟性と労働者の安全を求める積極的労働市場政策としてフレキシキュリティ(Flexicurity :「Flexibility」と「Security」を組み合わせた造語)を先導したデンマークが参照されることが多くあります。各国の主権があるため、ただちに我が国がEU諸国の法規制に従うことはないでしょうし、戦後70年続いてきた日本型雇用慣行が一朝一夕に覆ることもないと思われますが、今後、日本型雇用慣行が向かう新たな方向性に影響を与えるものとして注視しておく必要があります。


 

EU以外の国の労働者派遣

 日本の法規制が向かう方向がヨーロッパにあることに対して、日本と経済的な関係が強く、日本の企業が多く進出している国についても触れておきます。ここでは、主に日本人材派遣協会の資料をもとに各国の状況をまとめます。

アメリカ
 労働者派遣事業を管理・規制する法律は、連邦法・州法ともになく、派遣労働の正式な定義もありません。適用対象業務、派遣受入期間制限、事由の制限もありません。ただし州レベルでは、届出、登録を求める規制が見られます。
 企業は一時的、臨時的な雇用として人材派遣サービスを利用しますが、就業中の職務遂行状況が良好な場合には自社の労働者として採用することがあるため、結果として紹介予定派遣として機能することがあります。
 基本的に労働者派遣事業者が雇用者とされますが、共同使用者という概念もあり、派遣先企業も使用者としての責任を負うことがあります。
 人材派遣を利用する主な業種は、サービス業、製造業、卸小売業で、主な業務は、生産・輸送・運搬職(30%)、事務・管理サポート職(25%)、サービス職(16%)、専門職・関連職(13%)、経営・管理・財務職(8%)、販売職(2%)となっています。
 ピーター・F・ドラッカーが、著書の『ネクスト・ソサエティ ─ 歴史が見たことのない未来がはじまる』(2002年)の中で、人材派遣事業者が企業の社長まで派遣していると述べていることは注目に値します。


中国
 労働者派遣事業については、2008年の労働契約法と労働契約法実施条例によって規制されています。労働者派遣は通常、臨時的、補助的または代替的な職場に制限されます。二重派遣、および専ら派遣は、明確に禁止されています。
 人材派遣事業者は、派遣労働者と2年以上の固定期限労働契約を締結し、派遣労働者が派遣労働に就いていないときも、政府が定める最低賃金基準に基づいて月ごとに報酬を支給しなければなりません。
 派遣先企業は需要に基づいて派遣受入期間を設定しますが、期間を分割して短期契約にすることは禁じられています。
 人材派遣事業者が雇用者であることが、労働契約法に明記されていますが、同時に派遣先企業も雇用者とされており、雇用の概念が不明確になっています。
 均等待遇については、派遣先企業の労働者との同一労働同一賃金が保たれており、派遣先企業に同様の労働者がいない場合は、派遣先企業が所在する地域の同等または類似の労働者の賃金を参照することになっています。
 労働者派遣事業の急激な成長に合わせて、法律も整備されつつあり、派遣労働者保護の法律が考案されています。現在は、業種、職種に制限はありません。


韓国
 1998年7月に派遣労働者保護法が施行されました。職種や期間に細かい制限があり、秘書業務が最長で2年です。派遣労働者、派遣先企業、人材派遣事業者の三者の合意のもとに、2年以内ならば延長は何回でも可能です。2年を超える場合は直接雇用の義務があります。このため、契約期間満了の前に派遣契約が終了することが多く、非合法な契約を蔓延させています。
 製造業務派遣は禁止されています。臨時的または特別な場合のみ許可がされていますが、その場合の派遣受入期間制限は3か月までです。更新は1回のみで最長6か月まで受け入れが可能です。
 事務系は、1回の契約は1年間を上限に、最大2年間まで認められています。55歳以上の高齢者の派遣受入期間制限はありません。
 福利厚生、教育訓練、労働者基準法と産業安全衛生法の適用、社会保険給付について均等待遇が定められていましたが、さらに2007年の非正規職保護法により、派遣労働者と派遣先労働者との同一労働同一賃金が求められるようになりました。規制緩和への要望が強く、派遣可能業種の拡大とネガティブリスト化、派遣受入期間制限の延長、労働者派遣事業への調査や行政処分の軽減が望まれています。


まとめ~本書の意図

 6回に渡ってお送りしてきた本シリーズは、2016年10月15日に出版された書籍『雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント』の一部として公開いたしました。

 書籍では、いわゆる非正規雇用のなかでも特に取り組みが遅れているとされる外部労働市場 の人材派遣とアウトソーシングに焦点をあてながら四つの内容で話を進めます。
 第1章の「人材サービスを取り巻く雇用環境」では、労働者派遣法に関連する法改正の変遷 や国内外の雇用環境の現状を捉え、人材派遣とアウトソーシングの成り立ちをひも解きます。
 続く第2章「人材派遣サービスの有効活用」、第3章「アウトソーシングの戦力化」では、 企業において人事管理や現場の業務に携わる皆さまがこれらのサービスを公正かつ有益に利用できるよう要点を押さえながら、戦略的に活用するための考え方や実務について解説します。
 そして第4章の「雇用が変わる」では、我が国が抱える雇用問題の背景や今後を考察しながら、求められる雇用政策を提言するとともに、企業にとってのこれからの雇用のあり方を考えます。

 また、人材サービスを利用する企業と人材サービスを提供する企業の双方における筆者の知識や経験を織り交ぜながら、企業経営やビジネスの観点からご活用いただけることも特長としています。

 ぜひ、お手に取ってご一読くださいますようお願い申し上げます。





 編集/八島心平(BIZLAW)


The-Upheaval-of-Employment

雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント
The Upheaval of Employment

水川 浩之(著)
定価:¥2,700+税

出版社:   レクシスネクシス・ジャパン
ISBN-13:  9784908069598
発売日:   2016/10/15




 この連載記事を読む
  雇用が変わる ~人材派遣とアウトソーシング、外部人材の戦力化~




水川浩之

Profile

水川浩之人材サービス総合研究所 所長 (経営コンサルタント)

1982年、オンキヨー株式会社に入社。国内、海外の営業、マーケティングに従事、ドイツ現地法人に出向し当時の西ヨーロッパのマーケティング責任者を務める。
1992年、KDDI株式会社に入社。経営企画部門や事業企画部門を歴任する他、日本における事務系BPOの先駆けとしてサービス部門における業務プロセス改革のプロジェクトマネジメントに携わる。
2003年、アデコ株式会社に入社。社長室長、ビジネスプロセス統制部長、広報宣伝部長、社長付企画推進部長などを歴任。在職中、日本人材派遣協会運営支援部会、人材派遣健康保険組合監事、立命館アジア太平洋大学の非常勤講師も兼務。
「労働者派遣法改正」「今後の労働法制」「企業の人事戦略」など講演多数。
経営について稲盛和夫氏を師と仰ぐ。座右の銘は「敬天愛人」。




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