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我が国の人材サービス市場を
概括する(後編)

人材サービス総合研究所 所長 (経営コンサルタント) 水川浩之

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レクシスネクシス・ジャパン(株)が提供する法令・判例・行政総合ソリューション「Lexis AsONE」で好評連載中のオリジナルコンテンツ「Business Issues」から『雇用が変わる ~人材派遣とアウトソーシング、外部人材の戦力化~』をご紹介します。



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 この回では、前後編に分けて、我が国の人材サービス市場を以下観点から概括・分析していきます。

【前編】
(1)派遣労働者の動向
(2)派遣先企業の動向
(3)派遣元事業者の動向
【後編】
(4)伸び悩む労働者派遣事業
(5)歪められた派遣就労のイメージ


(4)伸び悩む労働者派遣事業

 労働者派遣事業の市場が伸び悩んでいる理由は大きく二つあると考えられますが、その一つは、法規制の改正です。

 法規制については、まず、2010年に当時の厚生労働大臣の指示により発動された「専門26業務派遣適正化プラン」が市場に大きな混乱をもたらしました。
 リーマン・ショック直後には、たしかに製造業務派遣を中心に約30万人が労働者派遣契約の打ち切りとそれに伴う派遣労働者の雇い止めや中途解約が社会問題化しましたが、さらに「専門26業務派遣適正化プラン」によって、その後の2年間で、政令26業務に従事していた約26万人が職を失ったことが厚生労働省の集計結果で明らかになっています。
 「専門26業務派遣適正化プラン」では、特に大手人材派遣事業者を対象に事務用機器操作とファイリングについて指導監督が強化されましたが、事前に人材派遣事業者が労働局に確認をした上で行っていたはずの派遣業務が労働者派遣法に抵触する、あるいは労働者派遣契約と無関係の業務を少しでも行っている場合も法に抵触するとされ、来客にお茶を出すことや電話を取り次ぐことさえ違法派遣であるとして行政指導が行われる事態に陥りました。さらに各都道府県の労働局に行政指導の裁量が委ねられていたこともあり、地域や担当官によって指導の内容が異なるという事態にまで発展し、労働者派遣事業者のみならず、派遣労働者や派遣先企業にも大きな混乱を与えることになったのです。これが「官製派遣切り」と揶揄されるゆえんです。

 2012年の労働者派遣法の改正も労働者派遣事業の低迷を招いた要因です。「平成24年改正法」とも呼ばれていますが、その大きな柱の一つとなるのが、日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止です。これによりさらに派遣労働者の雇用の機会が狭まりました。
 例えば、ご主人の年収が500万円以下の主婦は日雇派遣では働けません。派遣契約の期間が満了し、次の派遣先が見つかるまでの間の穴埋めとして日雇派遣で働くこともできません。何らかの理由で失業した人の年収が500万円以下の場合、再就職までの間に日雇派遣で働くこともできません。
 ごく一部に正規雇用に転換したという例外はあるものの、ほとんどの場合は、日雇派遣の原則禁止がパート・アルバイトといった、より待遇が悪くなる可能性の高い雇用につながってしまう状況を作ってしまいました。

 一方、日雇労働を求める企業も直接雇用で業務に対応せざるを得ないこととなり、一時的、臨時的なわずかな期間の業務のために求人、雇用契約、給与支払など、従来、労働者派遣事業者が行っていた雇用管理に膨大な手間とコストをかけなければならなくなっています。  いずれにしても、「平成24年改正法」は規制色が強く、派遣労働者にとっては働きづらく、派遣先企業にとっては人材派遣を利用しづらい環境を創り出してしまったのです。


(5)歪められた派遣就労のイメージ

 労働者派遣事業の市場が伸び悩むもう一つの理由は、派遣労働を巡る報道です。
 リーマン・ショック以前から、いわゆる非正規雇用による格差や日雇派遣による不安定さ、低賃金の問題、また、一部の悪質な日雇専門の労働者派遣事業者による二重派遣、禁止業務への派遣、不当な手数料の給与天引き、社会保険の未加入、労災隠しなどの不祥事などが横行していたことから、マスメディアは、これらを派遣就労と結びつけ、「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」という言葉を多用していました。
 これに追い討ちをかけたのが、2008年の「秋葉原無差別殺傷事件」です。当初、派遣就労が犯行の動機と原因であるとの報道がされたため、派遣就労のイメージを大きく落としました。実際には、この犯人は裁判で犯行の動機も原因も派遣の雇用形態とは無関係であると供述し、その供述が事実であると認められています。
 リーマン・ショック以降には、製造業務を中心に労働者派遣契約が打ち切られ、それに伴い派遣労働者の雇い止めや中途解約が多発したことに起因し、「派遣切り」という言葉が遣いはじめられました。
 たしかに一部の派遣労働にそのような事実もあったのだと思いますが、それがすべてであるかのような報道により誤解が誤解を呼び、社会的にも派遣労働そのものが問題視されるようになりました。
 派遣労働という就業形態はすべて悪である、というような報道のされ方が「派遣切り」という言葉につながっていったものと思われます。
 派遣就労だけでなく、いわゆる正社員の解雇や契約社員、パート、アルバイトの雇い止めまで「派遣切り」と表現するような、興味本位とも言える報道がされたことは非常に残念なことです。

 極めつけは、2008年から2009年の年末年始に東京の日比谷公園に開設された「年越し派遣村」でした。このとき日比谷公園に集まった約500名のうち約80%の人は派遣就労とは無関係の人であり、残りの20%の人も直接的に派遣就労の中途解約や雇い止めに遭ったものばかりではないというのが事実です。一種の政治運動に派遣労働が使われたという側面もありました。
 労働者派遣の就業形態とはまったく因果関係がない事件、事故を含めて、「派遣」という言葉を遣えば読者や視聴者の関心を誘うことができる、というような一部の心無い報道が続いていることは、派遣就労に歪んだイメージを与えている原因と言えます。自ら積極的に派遣労働という雇用形態を選択し、真面目に働く多くの派遣労働者や適正に運用している派遣先企業、労働者派遣事業者のことを思うと心が痛みます。


 続く第5回では、雇用を巡る国際的な動向について解説していきます。


 編集/八島心平(BIZLAW)



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 この連載記事を読む
  雇用が変わる ~人材派遣とアウトソーシング、外部人材の戦力化~




水川浩之

Profile

水川浩之人材サービス総合研究所 所長 (経営コンサルタント)

1982年、オンキヨー株式会社に入社。国内、海外の営業、マーケティングに従事、ドイツ現地法人に出向し当時の西ヨーロッパのマーケティング責任者を務める。
1992年、KDDI株式会社に入社。経営企画部門や事業企画部門を歴任する他、日本における事務系BPOの先駆けとしてサービス部門における業務プロセス改革のプロジェクトマネジメントに携わる。
2003年、アデコ株式会社に入社。社長室長、ビジネスプロセス統制部長、広報宣伝部長、社長付企画推進部長などを歴任。在職中、日本人材派遣協会運営支援部会、人材派遣健康保険組合監事、立命館アジア太平洋大学の非常勤講師も兼務。
「労働者派遣法改正」「今後の労働法制」「企業の人事戦略」など講演多数。
経営について稲盛和夫氏を師と仰ぐ。座右の銘は「敬天愛人」。




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