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株式会社アカツキ(第1回)

GVA法律事務所 弁護士 山本 俊、飛岡 依織

Venture

レクシスネクシス・ジャパン(株)が提供する法令・判例・行政総合ソリューション「Lexis AsONE」で好評連載中のオリジナルコンテンツ「Business Issues」から『弁護士の視点から観るベンチャー業界ユニーク人事制度事例集』をご紹介します。今回は「株式会社アカツキ」の人事・労務制度を解説します。(平成27年12月28日 Lexis AsONE上で公開)



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1 はじめに

 本連載は、注目のベンチャー企業が実際に採用するユニークな人事・労務制度について、労働法の観点から解説する連載企画です。今回は、株式会社アカツキの人事・労務制度を全2回に分けて解説します。

 株式会社アカツキ(以下「アカツキ」といいます。)は、「サウザンドメモリーズ」や「シンデレライレブン」など数多くのソーシャルゲームアプリをリリースする企業です。同社は、先日、有限責任監査法人トーマツが発表した、収益(売上高)に基づくテクノロジー企業成長率ランキング(第13回)「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド 日本テクノロジー Fast50」において、堂々の第一位に選ばれるほか、Great Place To WorkR Institute Japanの発表した2015年版「働きがいのある会社」ランキング(従業員25人~99人部門)において、2年連続で選出されるなど、成長著しいIT業界注目の企業です。

 株式会社アカツキは、「人々の自発的な力が社会を幸せにする」という信念に基づき、社員一人ひとりが自発性をもって仕事に取り組めるよう、ユニークな人事制度を多数取り入れています。今回は、そんな同社が採用する、社員の自発性を引き出す為にも心身が健全であることも大切だという同社の工夫について、労働法の観点から解説していきます。

 

2 アカツキのカウンセラー制度

 アカツキの採用する特徴的な制度の一つとして、社内カウンセラー制度が挙げられます。

 同社には、専属のカウンセラーがおり、約70人いる正社員全員に対し、月に一回程度、一人1時間のカウンセリングを実施しています。カウンセラーを務めるのは、大手企業の社内カウンセラーを務めた経験のある方で、アカツキの創業当時からずっと、社員の心のケアを担当し続けているのです。このようなカウンセラー制度を導入するきっかけとなったのは、創業間もない時期に、社員が辞めようかどうしようかと悩んでいることに経営陣が気づいてあげられなかった経験にあるといいます。

 現在は社員が増えたこともあり、毎月、1時間のカウンセリングを約70名分行うというのはかなり大変になってきたといいますが、それでも続けている理由は、カウンセリングの実施によって、社員の悩みや心の変化を初期のうちに察知して適切に対応することができるからだといいます。カウンセラーは、定期カウンセリングで社員一人ひとりの心の動きを敏感に感じ取り、気になる点があった社員については、次の面談を予定に入れ、悩みが解消するまで何度も面談します。

 このようなカウンセリングの結果を受けて解決すべき事象においては、必要に応じて労務担当者やマネジメント層に共有することにより、マネジメントする側からの社員への働きかけが可能となります。その結果、社員が一人で思い悩むのではなく、マネジメント層に相談することで早期解決を図ることができるのです。

 

3 ストレスチェック制度の義務化

 2014年に労働安全衛生法が改正され、2015年12月1日から、常時使用する労働者が50人以上の事業所における労働者に対するストレスチェックの実施が義務化されます。

 ストレスチェック実施義務の概要は以下の通りです。

■ 義務内容
 ① 1年以内ごとに1回、定期に全従業員へのストレスチェック実施
 ② 高ストレス状態かつ申出を行った従業員への医師面接
 ③ 医師面接後、医師の意見を聴いた上で必要に応じた就業上の措置
 ④ ストレスチェック・面接指導の実施状況を1年に1回、労働基準監督署に報告

■ 出来るだけ実施することが望ましい努力義務
 ストレスチェックの集団分析及びその結果を踏まえた職場環境改善

■ ストレスチェック項目
 「職業性ストレス簡易調査票」の項目(57項目) ※厚労省推奨

■ ストレスチェックの実施者(実施者になれる者とその役割)
・実施者の資格
 医師、保健師、検査を行うために必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した看護師又は精神保健福祉士
・実施者になれない者
 受検労働者について、解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者

■ストレスチェック制度の流れ(※画像はクリックで拡大します)
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※引用元:厚生労働省「改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について」5P

 

4 メンタルヘルス対策の重要性

 このようなストレスチェック制度が義務化された趣旨は、定期的に労働者のストレス状況について検査を行うことで、個人のメンタルヘルスリスクを低減するとともに、検査結果の集計・分析により職場環境を改善し、ストレス要因の低減につなげることにあります。

 従業員のストレスレベルが高く、メンタルヘルスが悪化すると、集中力の低下などによる業務効率の低下、遅刻・早退・欠勤などによる業務停滞に加え、他の従業員との不調和や職場全体の士気の低下など、他の従業員への悪影響をも引き起こす可能性があります。

 また、長時間労働や人間関係の悪化、パワハラなど、職場環境が原因でメンタルヘルスが悪化した場合には、休職や退職トラブルにつながるケースも多くあります。さらに、こういったケースでは、従業員と会社との関係が悪化している場合が多いため、本来メンタルヘルスとは直接関係しない残業代請求などの派生トラブルを招きかねません。

 一度このようなトラブルが生じると、経営者は多くの労力と時間を割いてこれに対応しなければならず、特にリソースの少ない中小のベンチャー企業においては、企業の成長のストップ要因となり得ます。

 実際にも、メンタルヘルスの悪化による求職者が増加した企業は、他の企業と比較して利益率が顕著に悪化する等、従業員のメンタルヘルス問題が企業の業績に重大な影響を与えるとする研究結果なども発表されています(黒田 祥子(早稲田大学)、山本 勲(慶應義塾大学)「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」2014年4月)。

 アカツキの採用するカウンセラー制度は、極めて有効なメンタルヘルス対策といえます。

 従業員にとってストレス要因は多々ありますが、まずは従業員の心の動きを敏感に察知し、それが職場環境に起因するものであった場合には、できるだけ芽の小さなうちにきちんと対処することによって、従業員自身もより健康に、かつ自主性を持って働くことができ、モチベーション向上につながるとともに、個々の社員のパフォーマンスが上がることで、企業全体の利益も押し上げることにつながるのです。

 

5 まとめ

 規模の小さな企業では、アカツキのような専属カウンセラー制度を導入することは容易ではないかもしれません。ただ、同社は、初期の段階から強い問題意識を持って取り組んだことで、社員の自発性を引き出し、社員にとって「働きがいのある会社」となっただけでなく、日本のベンチャー業界屈指の成長企業となったのです。

 このように、企業ができるだけ従業員のストレス状況を把握しようと努めることは、社員に健康や幸せをもたらすだけでなく、結果的に会社の収益拡大につながり、会社を成長させる近道となるということを、アカツキの事例を通して知っていただければと思います。

 続く第2回では、アカツキ独自の採用、マネジメント手法にフォーカスしていきます。



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 弁護士の視点から観るベンチャー業界ユニーク人事制度事例集

gva_prof

山本 俊 [GVA法律事務所 代表弁護士]

2006年 岡山大学法学部卒業。
2008年 山梨学院大学法科大学院卒業。
2008年 最高裁判所司法研修所に入所。
2009年 鳥飼総合法律事務所に入所。
2012年 GVA法律事務所設立。
2014年 シンガポール外国法弁護士登録。
ベンチャー企業を中心に120社以上の顧問弁護士として法務全般をサポート。企業のスタートアップから成長途上のベンチャー企業、さらにバイアウト・IPOに至るまで幅広く法務サービスを提供。特にITベンチャー企業のWEBサービス・アプリの法務戦略構築の経験は豊富。国内だけではなく、東南アジアで起業している日系ベンチャー企業のサポートも担当。セミナーの講師実績も多数。


飛岡 依織 [GVA法律事務所 弁護士]

2008年 同志社大学文学部卒業。
2012年 明治大学法科大学院卒業。
2012年 最高裁判所司法研修所に入所。
2013年 GVA法律事務所に入所。
2014年 社会保険労務士登録
ベンチャー企業を中心に、顧問弁護士として法務全般、特に労働法務の観点から企業をサポートする。また、ITベンチャー企業のWEB・アプリサービス関連法務を多数取り扱っており、中でも、医療・教育×ITの分野に強い関心がある。




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