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「発注者」という言葉では足りない

株式会社8bit、 弁護士法人ファースト法律事務所 髙本 徹、 藤井 総


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髙本 今、藤井先生のお話にも出ましたが、この本は章によってトラブルのケースが違います。
 「Webサイトの制作を依頼する」といっても、その先が制作会社なのか、代理店なのか、フリーランスなのかで発注側が気をつけるべき点や、念押しのテクニックなどはずいぶん異なりますので、この本では制作会社に発注するケース、代理店に発注するケース、フリーランスに発注するケース、それぞれのケースで読者をイメージして事例を作っています。
 また最近は、個人でオンラインショップを開く人も増えていますよね。そうしたオンラインショップの発注者を念頭に置いた事例も含めています。

 実は、本書を制作する過程で、章立てを大きく変更したんですよ。
 当初は、今言ったような「制作会社へ発注の章」「フリーランスへ発注の章」「広告、SEOの章」の3部構成だったんですが、執筆を進めながら、これは章ではなくて、発注先の区別にしたほうがいい。章はもっと細かく場面設定をしたものにしたほうがいいと考え、第1部は全体で20章の区分にしました。

 また、今回の本では極力「会話」を使うよう意識しています。実際にどんなやり取りが現場で行われて、どんなトラブルにつながってしまったのかは、会話文で見せたほうがより分かりやすいと思いました。『受注契約の教科書』では、要点を箇条書きにしていたので、これも今回の本ならではのポイントです。大体のトラブルは、言った言わないから始まるので。

藤井 先ほどもお話したとおり、法律論を展開する場合、法律家は法的な論点ごとに解説をします。
 けれども実際には、現場でトラブルが起きたとき、それが法的にはどの論点が問題になるのか、現場の方にはわかりません。 目次が法的な論点ベースになっている書籍は法律家向けです。仮に、今回の本が法的な論点ベースで構成されたとしたら、現場に立つ読者は、自分がこの本のどの箇所を読んで何をすればよいのか分からないでしょう。
 事例ベースに構成する中で解説を展開することで、読者は自分の知りたい箇所をピンポイントで見つけることができます。第1部の章立てと事例はまさに現場に根ざしたものなので、そこに対応するように、私も事例ベースでの解説を心掛けました。

 法律書を手に取ったこともなく、裁判例の法実務上の位置付けもイメージしにくい読者が読みやすいように解説を展開しようとすると、既存の法律書の記述はあまり参考になりません。その意味で、本書の執筆はかなり産みの苦しみがありました。
 結果、法的な論点ばかりにフォーカスせず、またそもそも、法律に関係のない部分、それこそ「よい受注者の選び方」なども第2部には含まれています。しかしその一方で、書き終えたときに「これは業界にきっと役立つ」という感触を得ました。

髙本 藤井先生の原稿を読んで、まるで自分が注意を受けているように感じましたね。
 実体験をフィクションとして第1部を書いたんですが、現場対応としてOKだと思っていた部分も、法律に照らすと間違っていたんだなと……。

藤井 いや、それはこちらも同じです(笑)。
 実務と法律は違うんだということを、1部の原稿を読んで改めて思いました。
 法律家は、法理論をベースとしつつ、立証の可否も踏まえて、実際に裁判になった場合に裁判所がどう判断するのか、を最終的な検討基準とするのが通常です。
 でも、いったい実務で、特にWeb業界で、裁判にまで至るケースがどれだけあるのか、という話です。ほとんどは裁判にまで至らず双方の話し合いで解決するか、あるいは一方が我慢することで終息していると思います。そもそも今の状況が、法が絡んでくる、法によって解決できるトラブルであるかどうかすら認識されないまま、弁護士にも相談せずに終わるケースも多いでしょう。

 そこから逆算すれば、裁判所がどう判断するかの前段階として、実際の現場でどう解決できるのかが、まず先に検討すべきことなのです。
 であれば、現場に向けて我々法律家がやるべきことは、裁判対応よりも先に、トラブルに至らせないための、あるいはトラブルを早めに解決させるための、契約の仕組み作りですよね。

 と、こう口にするのは簡単ですが、法律家から見ればなかなかこの意見は出ません。髙本さんの原稿を読んで、認識を改めました。

(第2回に続く)



取材、編集/八島心平(BIZLAW)
撮影/柏崎佑介




この連載記事を読む
 Web制作の現場で起こりがちな事例から学ぶ、発注トラブル回避法。

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髙本 徹(たかもと とおる) [株式会社8bit Webディレクター]

1976年生まれ。1998年明治大学理工学部卒業。システム開発会社、Web制作会社での勤務を経て、2009年に株式会社8bitの常務取締役に就任。創業時より自社で運用しているWebサービスすべての企画立案に携わり、画面設計からプログラミングまでを行う。受託制作では主にプロデューサー兼ディレクターとして企画提案から契約交渉などを担当している。個人でもWebサービスやスマートフォンアプリの開発を行うなど、積極的に創作活動を行っている。

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藤井 総(ふじい そう) [弁護士法人ファースト法律事務所 代表弁護士]

1983年生まれ。2005年司法試験合格。2006年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2007年弁護士登録。2015年弁護士法人ファースト法律事務所設立。I T 企業の法律問題に特化し、顧問先の90%以上はIT企業。Web業界の契約書作成や契約トラブルの対応にも豊富な経験がある。「世界を便利にしてくれるサービスを生み出すIT企業をサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、Webサイト(IT弁護士.com)での情報発信やチャットによる法律相談を活用し、中小のI T 企業を全国対応でサポートしている。



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