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法令の解釈では終わらない、
自社のコンプライアンス体制を
構築するのはあなたです。

国広総合法律事務所 弁護士 國廣 正、五味 祐子、中村 克己

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Author’s Voice – 『海外贈収賄防止コンプライアンスプログラムの作り方』

2015年3月17日、『海外贈収賄防止コンプライアンスプログラムの作り方』が弊社から刊行されました。本書は、企業の法務・コンプライアンス担当者、中小企業の経営陣や総務・法務担当、海外案件担当者向けに、危機管理のスペシャリストである著者陣が、いかに実践的にコンプライアンス整備をおこなうべきか指南しています。
ここでは、著者の國廣先生・五味先生・中村先生に、本書執筆の背景やその読みどころを語っていただきました。

海外贈収賄防止コンプライアンスプログラムの作り方

海外贈収賄防止コンプライアンスプログラムの作り方
How to make compliance program for anti-bribery?

国広総合法律事務所
國廣正、五味祐子、中村克己

定価:¥3,500+税

出版社:レクシスネクシス・ジャパン(2015/3/17)
ISBN-13:987-4-90869-13-0

現地の相手方から要求されるところから
始まってしまうのが外国公務員贈収賄

――今、海外贈収賄に関して、どんなリスクがあるのでしょうか。

國廣 たとえば「海外贈収賄のリスクがあるね」という話になると、「やっちゃいけない、気をつけましょう」ということになり、社内規則やマニュアルを作って贈収賄を防止する体制を作るだけの企業があります。しかし海外贈収賄の実際は、日本企業が積極的に働きかけるというよりも、相手方の外国公務員から要求されるという「受け身」のケースが多いのです。だから、実務的には、これにどう対応するのかが重要です。
 ところが、企業がコンプライアンス体制を作る際、「どう対応し、どう断るか」という観点が抜け落ちてしまうことが多く見受けられます。
 また、「外国公務員の贈収賄」というと、すぐにFCPAの専門知識の迷路に入り込み、ファシリテーションペイメントにあたるかどうかなどといった細かい解釈論ばかりに意識を向けがちです。

 しかし、最も重要なことは、案件を受注するために「不正の意図」を持って多額の金銭を供与すること、しかもそれを直接手渡すのではなく、エージェントやコンサルタントを通じて供与するといった「重大なリスク」を回避することです。街を歩いていると警察官に10ドルせびられるといったこともあり、それも贈収賄にはなりますが、そのような細かいことへの対応ばかりに終始するのではなく、企業にとってのリスクの重大性に応じたメリハリのある対応が必要なのです。企業にとっての大きなリスクは何なのかを自ら見極め、リスクベースの発想でそこにフォーカスした経営資源を投入することが最も大事なのです。



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五味 海外贈収賄防止規程やコンプライアンスプログラムは、実際に機能するものであるかが重要です。本書は、これから体制作りに着手する企業だけでなく、既に体制がある企業にも、それが機能するものかどうかという点からの検証に活用してほしいと思います。また、海外贈収賄リスクといっても、一義的なものではありません。ビジネスやプロジェクトの内容、進出先の文化、商慣習、法制度などによってリスクは異なります。現地の実情に沿ってリスクを洗い出し、優先順位をつけて対応策を講じるという発想で、「現地が使える」コンプライアンスプログラムを作ってほしいと思います。

中村 たとえばカルテルであれば、カルテルから決別するという意思さえぶれなければ、一企業の判断で決別することが可能です。しかし海外贈収賄では、強い立場にある相手方からの積極的な働きかけ、要求があるので、そう簡単ではありません。その点が、カルテル対応より難しいわけです。本書ではその対応を知ってほしいと思います。

五味 海外贈収賄リスクは、新興国でビジネスをする企業には必ずついて回ります。現地がリスクに直面した場合に適切に対応するためには、相手方から要求されたときに備えて、現地のリスク認識を持ってもらうことと、対応手順の整備が必要です。リスクが顕在化した場合の現地、本社が取るべき「具体的な行動」についてもしっかり記載しているのが本書の特色の一つです。



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――たとえば、担当者がやる気になっても会社が動かないこともあります。トップの意識の持ち方についてはいかがでしょうか?

國廣 実際、担当者はリスクの現実を認識しているものの、トップ層の意識が低く、文書を作って終わりになるパターンも多いと思います。そうならないためには、「どうやってトップをその気にさせるのか」が大事になってきます。この本の読者は中堅法務部員が中心となると思われますので、「自社のトップをどう動かすか」についても書いています。私たちの事務所では、海外贈収賄防止のコンプライアンスプログラムの作り方について、多くの企業から相談を受けていますが、その入口は、「トップをその気にさせる」ことに尽きます。「法律はこうなっているから」というだけでは説得力がありません。会社自体がリスクの大きさを認識し、これを深刻に受け止めることで初めてコストと手間をかけたリスク管理(コンプライアンス体制整備)が有効になされるのです。これは海外贈収賄だけではなく、あらゆる企業活動にも共通する重要な点です。

五味 トップ層が高い意識を持って、会社全体に、贈収賄はおこなわないという方針を明確に示すことが重要です。そうでなければ、現地は贈収賄の要求を断りたくても、ビジネスを失うことを恐れて断り切れないのです。

中村 大企業ほど現地に丸投げで、現場に「お前たちうまくやれ」となることも少なくありません。ですから、この本では冒頭で、海外贈収賄が会社本体のリスクであることを強調しています。会社として、そうした正しいリスク意識を持って、現地を見に行き、前線の役職員をバックアップする必要性を説いたつもりです。

國廣 海外贈収賄防止の問題は、FCPA以前に、企業集団におけるリスク管理体制整備義務という会社法の問題です。つまり、海外贈収賄防止は、本社の取締役の善管注意義務の問題に他ならないのです。この問題では、「FCPAの解説が英語だから」とか、「海外のことは現地に任せるしかない」などといって、経営層の危機意識が薄れてしまいがちですが、「自分自身の善管注意義務の問題である」という現実を認識してほしいと思います。

中村 海外のネットワークに強い法律事務所に丸ごと任せるという対応も、現実にはありますが、あくまで自社が主体的に関与すべき問題であることを意識してほしいですね。

國廣 企業集団のリスク管理体制をどう作るか、という部分が本質的な課題です。それはビジネスの現場にあるリスクを知る企業自身が自らおこなうべきことです。専門家に丸投げして、その言いなりになっている企業も見受けられますが、それではいけません。まず、企業による主体的なリスク管理があり、専門家は必要に応じて起用するというスタンスが必要です。「犬が尾を振る」のであって「尾が犬を振る」のではありません。

五味 海外贈収賄は特殊なリスクであると考えておられる方もまだいらっしゃいます。日本の公務員に対する「贈収賄禁止」という意識はかなり浸透していると思いますが、海外が舞台になると「少額なら許される」「ビジネスを取るための必要悪」という意識が生まれがちです。そのような意識を払拭し、公務員に対する贈収賄禁止は万国共通のルールであり、どこにいてもリスクなのだという意識を持っていただきたいと思います。

図式的には反社会的勢力と同じ
いってみれば国際ミンボーの問題。

國廣 90年代初頭を思い返してみてください。当時は多数の総会屋が大手を振って歩いていました。しかし今では、反社会的勢力との関係を断絶できない企業は「退場命令」を受けるのが常識となりました。当時「反社会的勢力と急に断交すると仕返しが……」などといってキッパリした対応を取れなかった企業がその後どうなったかは、歴史を見れば明らかです。海外贈収賄問題も、反社会的勢力との断絶問題(民事介入暴力=ミンボー問題)とまったく同じです。企業のミンボー対策とまったくパラレルな問題として、海外贈収賄の問題を認識してほしいですね。この問題は、いわば「国際ミンボー」の問題なのです。

――FCPAや英国Bribery Actをしっかり勉強している法務部の方も見受けますが、「お勉強」だけではダメだという本書中の強いメッセージが印象的です。どういったところから出てくるものでしょうか。

國廣 判例評釈、英米法解釈も大切ですが、実務の世界では「国際的な民事介入暴力にどう対応するのか」という危機管理的発想が、経営層には求められています。

中村 実際に多額な課徴金が課されている事案というのは、直接であれ間接であれ、海外公務員に多額の金や物を渡して、その見返りを得ているといったものですから、それはもう法律の解釈云々ではなく、常識に照らして明らかにアウトなわけです。ですから、コンプライアンス担当者は、細かな法律解釈にこだわりすぎるのではなく、現に存在する海外贈賄リスクが顕在化したときに実際どんな対応をとるべきかという点に重きをおくべきです。



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――國廣先生は企業不祥事による第三者委員会でのご経験も多くお持ちですが、そうなってしまわないためにどういうことが必要でしょうか。

國廣 数多くの企業不祥事、国際カルテル、偽装事件、有価証券報告書訂正など、そして、海外贈収賄事件といった危機的状況に直面したときにどういう対応がベストか、我々の経験値に根ざして、海外贈収賄を防止する実戦的なプログラムの作り方を書きました。100頁を越えるような英文のひな形を作っておけば安心する人もいるかもしれませんが、本書の資料編に収録した規程集のひな形は、我々の体験と実践に基づき、本質的な部分を簡潔に提示しています。

五味 企業不祥事が起きたときは、①トップの意識の在り方、②コンプライアンス体制の運用実態、③体制は企業の現実に即していたか、の3つが検証ポイントになります。不祥事が発生した企業のコンプライアンス体制を検証すると、リスク情報伝達体制の不存在や機能不全により、本社や経営層が適時適切にリスク情報を把握できずにリスクが拡大し、危機的状況に発展した事案が多く見られます。海外贈収賄においても、本社がいかに早く正確に現地のリスク情報を把握できるかがリスク管理の成否を分けると思います。ですから、海外贈収賄のコンプライアンスプログラムを作るときにも、「情報伝達ルートの整備」「問題が起こった場合の現地から本社へのリスク情報の報告手段」という点を意識してほしいと思います。

中村 ビジネスの前線では、「これを飲まなければビジネスが成立しないのでは」という思いから、本音ではやりたくないと思いながら、現地の従業員が不正行為に関与してしまうというケースが少なくありません。しかし、その結果、手が後ろに回ってしまうのは、その従業員個人なのです。この本で読者に伝えたいもうもう一つの点は、「海外贈収賄の問題は、担当従業員ではなく、会社全体で対応すべき問題である。だから、一人で抱え込まずに本社も巻き込んで解決しましょう」ということなのです。

五味 その点でも、反社対応と同じですね。コンプライアンスは会社を守るためのものですが、役員個人や社員個人を守るためのものでもあります。役員も社員も一人一人が、贈収賄は自分のリスクであることを理解し、そのリスクを軽減するためにも本書を手に取ってもらいたいです。

國廣・五味・中村 法務部やコンプライアンス担当の方は忙しいと思いますが、出来る限り現場に出て、海外に行って、相手方からのリスキーな要求をどうやって断るのかを、現地スタッフと一緒に考えてほしいです。そんな出張の際に、本書を持参して読んでいただければ、嬉しいですね。


写真/稲垣正倫(BIZLAW)
取材・編集/新川量子(編集部)



企業不祥事の予防と対策



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Profile

國廣 正(中央)
弁護士(国広総合法律事務所)。1979年東京大学法学部卒業
専門分野は、危機管理(企業のクライシス・マネジメントの立案・実行、重大案件の社内調査など)、リスク管理体制構築(コンプライアンス、コーポレートガバナンス、内部統制)。多くの大型訴訟(株主代表訴訟、監査法人責任追及訴訟など)、重大企業不祥事の危機管理(適時開示・広報対応も含む)、第三者委員会調査などを手がける。
著書に『修羅場の経営責任 今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実』(文春新書)、『それでも企業不祥事が起こる理由』(日本経済新聞出版社)など。
日本経済新聞「2014年企業が選ぶ弁護士ランキング」の危機管理部門第1位。

五味 祐子(右)
弁護士(国広総合法律事務所)。1994年上智大学法学部国際関係法学科卒業
コンプライアンス体制構築、危機管理、訴訟(株主代表訴訟等)等を専門とし、会計不正、海外贈収賄、情報セキュリティ、ハラスメント等不正案件について組織内外の調査委員会・アドバイザリー業務に多数従事。ホットライン、ハラスメント外部窓口を多数担当。
論文「最近の企業経営リスクの顕在化事例と要因」(「企業を成に導くリスク管理経営」日経BPムック・日経BP社)、「管理者が知っておきたい職場のハラスメント防止策と事後対応」(JA金融法務2015年1~4月号)、「コンプライアンスと内部監査の強化」(内部監査研究2008年2月号)等。
著書に『コンプライアンスのための内部通報制度』、『内部統制とは、こういうことだったのか』等、DVD「海外進出企業のリスク対策」監修(いずれも日本経済新聞社)。

中村 克己(左)
弁護士(国広総合法律事務所)。1993年東京大学法学部卒業
コンプライアンス態勢構築・企業の危機管理等を専門とし、厚生労働大臣直属の「標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会」の他、「外国政府関係者に対するリベート問題に関する第三者委員会」、「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」等、社内外の調査委員会業務に多数従事。
論文「経営トップの不祥事に法務部はどう対処すべきか」(ビジネス法務2012年3月号)等執筆。
著書に『労働契約の終了をめぐる判例考察」(共著。三協法規出版)『就業規則の変更をめぐる判例考察』(共著。三協法規出版)など。






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